王城夕紀『青の数学2』新潮文庫nex
「私に、今から開く問題が解けますか。」(p.134)
前作に引き続き数学の道を歩みつづける主人公ですが、スランプに落ち込みます。数学の決闘でも勝てなくなってしまいます。そんな中、復調の兆しを見せはじめた頃、上記のように祈っているように見えるシーンがありました。その箇所を読んだ時、私の頭に浮かんでいたのはKOKIAの「祈りにも似た美しい世界」という歌でした。
「全力を出しても勝てないと悟って、なおその人の前に立たなければならないのは、しんどい」(p.29)
数学で思うように点数を取れなかったことを思い出します。全力で勉強しても解けないのに、なお解きつづけなければいけないのはしんどい。単純に才能が無いのだと思ってしまいます。でも、
「問いを前にして立ち続けていられることだな」(p.242)
数学の才能が作中述べられていた通りなら、
「数学的なことは数学的なことであり、それ以上の意味や含意を見出そうとするのは数学者の態度とは言えない」(p.189)
邪道であったとしても、何事においてもそれとともに在りつづけられることが才能がある、ということを意味するのかもしれません。
そうやって祈るように対峙しつづける静謐の中に道を極めるということはあるのだろうなと思います。